「あ、おかえり新一」
にこにこ、という擬音がそのまま聞こえてきそうなほどの満面の笑みで迎えられる。
「……何してんだ、オメー…」
リビングの扉を開けた瞬間目の前の光景を目の当たりにし、げんなりと口を開いた。
快斗がリビングに居るのはいい。合鍵を渡した覚えがないことも一先ず置いておくとしよう。
問題点はそこではない。問題は快斗が抱えているものだ。
「何って、長年の夢?」
言いながら、手に抱えている大きな銀色のボウルとスプーンを至極嬉しそうな表情で眺めている。
「夢、って…オメーの夢ちっせぇな〜」
「うっせぇな!誰だって1回は考えるだろー!ボウルいっぱいのフ●ーチェ!!」
…アレか、牛乳と混ぜるだけで出来るやつ。
覗き込むと、所々赤の混じったピンク色をしたヨーグルト状のもの(おそらくイチゴ味)がその8分目辺りまで埋まっている。
俺は思わずうっ、と小さく呻いた。
きっと、これは自分が帰ってこなかったら…いや帰ってきても1人で完食する気だったのだろう。想像するだけで胸焼けモノだ。
試しに何袋分かと聞くと、スプーンを銜えてにんまりしている快斗が「5」と指で示した。
「げぇ、パーティでもする気かよ…」
「やってもいいんならそりゃもう盛大に」
「やめてくれ」
「即答かよ」
「自分ち行けよ。…つか、食えんの?」
「あったり前じゃん!俺の10年来の夢だぜ?」
「スーパーで見つけて思い出した、程度の夢だろ。机に乗ってる袋の中の食料片付けてから食えよ」
「へーい…」
ぶつぶつ言いながらテキパキ冷蔵庫に仕舞う快斗を見て、よくもまぁこんなにも食べる気になれるよなぁと賞賛にも似た思いを抱く。
でもやりたくなる気はわからんでもない…と俺が思っているということを一言でも漏らせば確実に付け上がる。どうしろってんだ。
銀色のボウルを複雑な想いで眺めていると、台所から「次はボウルでプリンなー!」と能天気な声がした。
ボウルいっぱいの夢